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オーボエの極意

人生で1%しか日常生活にこだわりを持たない私ですが、その他の99%を今も音楽に関して持ち続け、そのほとんどをオーボエに捧げていた時期が20年以上ある。今もそのこだわりはそのままに、その私のハマってしまったオーボエって聞いた事ない!知らない!、、、と言う方のために書いてみようと思う。

 

オーボエってどんな楽器?

オーケストラのチューニングが始まる時、あのちょっと鼻にかかった様な高めの音を出す、吹き口が細ーいクラリネットに似た楽器。弦楽器のすぐ後ろの真ん中あたりに数人座っている。お隣はフルートが多い。

それがオーボエ。ピンと来ない方はオーケストラのYoutTubeチューニングから出てくる動画をご参照ください。

 

オーボエってどんな音?

「白鳥の湖」の一番有名なテーマ。映画やドラマの「ちょっと悲しいシーン」や、哀愁帯びたシーン。演歌のイントロ。などで聞かれる。

 オーボエ属と言われる楽器が他にもいくつかあって、少し低いのがオーボエダモーレ「ボレロ」という楽曲で有名。もう少し低い、大きい楽器がイングリッシュホルン。

こちらは日本の童謡になった「遠き山に日は落ちて」のメロディー、「ドボルザーク新世界のメロディー」や、ウイリアムテル序曲の冒頭部分が有名。

 

他の楽器と何が違うの?

 

1)リード

ダブルリードという、上下2枚の薄い弁を唇で包み込み、その2枚のリードの間に息を吹き込み音を出す楽器だが、そのリードという吹き口を自分で作る楽器。全ての工程で、0.1mm単位の厳密さを要する繊細さを擁する楽器。背の高さほどのバスーン(ファゴット)という楽器もあるが、同じダブルリードで難しさを競い合っていますが、それとは難しさの観点がちょっと異なる)。奏者のこだわりにもよるが、ほとんどのプロフェッショナルは100%以上のこだわりを、全ての工程に持って原材料の葦(あし)という細い竹筒の様なものから作る。オールハンドメイド(途中機械使用あり)で時間とスキルを駆使して作られる。リードの作り方を知らないビギナーの方は、先にリード調整のスキルを覚えると、市販のリードが操れる様になるので演奏が楽になる。

 

2)楽器

見た目からも分かる様に、とにかくキーが小さくて、数が多いので、チェックする穴とパッド数も多い。演奏スキルと一緒に、この楽器調整・メンテナンスのスキルをある程度持っていないとコンスタントに音を出す事が難しいし、ほんの一箇所の狂いが全ての音に影響を及ぼす恐れもある、恐ろしい楽器。指の運びもより優しくないと、音に影響が。

 

3)体

音を出すエネルギーは息そのもの。その息を作り出す呼吸法と体の筋肉の緊張具合が音にストレートに現れるので、全身の筋肉をコントロールできる様になる必要がある。力任せでなんとかなっていた若い頃とは変わり、年齢と共に筋力の衰えをサポートするために、カフェイン、睡眠、アルコール、香辛料、など年々気をつける事が増える。

 

この3点の探究には終わりが見えない。リードと楽器と体。この3つは別々にありながら、全て関連性がある。そして全て生ものなので(楽器も木でできているし、日々呼吸している)日と時間をもって変化し続けている。そして早かれ遅かれ寿命が来る。どんなに手をかけ、可愛がっても、一生同じものを持ち続ける事が出来ないし、これらを習得するのに近道はない。自分が演奏を止める日まで自分も変わり続けるから、その変化をデータ化し、普遍性を見出して論理化し、そこから安定性と関連性を見つけていく修行を続けるしかない。そこには常に居心地の悪い何かが存在し、それをクリアにしていく作業と言ってもいい。音楽を奏でるまでに少々他の楽器に比べて時間を要す。

健康な体を作り、いいリードと出会い(最近はハンドメイドのいいリードやプラスチック樹脂の完成リード、種類も選べる)いい楽器と出会い、それを操る技術と音楽に関するスキルを体得し、出したい音が明確にイメージできれば、良い音、いい音楽に近付けます。スタート地点で、他の楽器よりリード代、楽器代の単位が一つ違うというのが、ネック。

 

教えるのも習うのも忍耐が要る楽器。先生と同じリード、先生と同じ楽器、先生と同じ体格だったら、比較的早く習得出来る確率が高い。でも、ほとんどの場合全く違うのが当たり前。まず生徒さんにこの楽器、リード、体の3点に注意を向ける様にというところからレッスンは始まる。そしてゴールは、すべてのエネルギーを、奏でたい音楽を表現するためのエネルギー変換できる様にすること。