昔々、、、イギリスに旅行して楽器屋さんを覗いた時、夢のような本に巡り合った。
タイトルは「Reed Doctor」『リードのお医者さん』
その時のリードのコンディションと対処法が書かれていた。つまりはリードの最終調整のための本。本と言うよりそれは小冊子のような物だったが、某有名出版社
「Boosey and Hawkes」から出ていた、緑の表紙のA4 サイズの紙を4分の1にしたような小さな小冊子のような物だった。30年も前のことだから、現物をなくしてしまった。その内容を私は理解したから手放したと言うことにしてみよう。
そこで気付かされた事は本当にたくさんあった。リードの機能など全く理解していないまま、感だけでひたすら作り続けていた私。当時の先生は、「君の今の音を変えたくないからリードはタッチしないよ」と、全く私のリードを触らない先生だったので、どんな不都合があろうとも、相談できず、体を捻じ曲げ、口をへし曲げ、その音をキープする為に必死にただただたくさんのリードを作り、吹いていた。
そこにあらわれたその「リードのお医者さん」と言う本は、本当に眼から鱗だった。
自分が無意識で行なっていた事を、ほとんど意識化してくれていたのだ。簡単な内容だったので、覚えている範囲で書いてみる。今ではもっといい本が出ているかもしれないが、私の勉強不足かまだ出会っていないので、その本の知識から引用する。(注:ショートスクレープのみに対応)
第一チェック:ピッチが低すぎたら、開きが大きすぎるので、先端をつまみ、少し待ってから吹こう。これで解決できない時は、ワイヤーで開きを調節する事も可能
第2チェック:ピッチが高すぎたら、全体をスムーズに薄くして行こう。低くなりすぎたら、先端をカットしよう。しかし72MM よりは短くならないように。
第3チェック:発音が悪かったら先端を薄くしよう。薄過ぎたらピッチが定まらなくなるので要注意
第4チェック:音が明るすぎたら、サイドを削ろう。暗すぎたら、センターを削ろう。
これは、本当に応急処置程度なのだが、本番前のパニック時に本当に役立った。そして、ある意味リードの機能のようなものに、目覚めた瞬間だった。
リードの最終調整法は、今でもこの時の知識を元に、自分なりの物を付け足して行っている。最終的には全身の体幹(チャクラ)、体感作用とリードの関係にまで発展してしまったが、それは生徒が自分でリードを調整したり、作ったりする時にも大いに役立つ。コロナのために、吹いて確認してあげられない時も、彼らの体の様子(体感)を聞けばどこを調整すべきかわかるようになった、そして、自分の自身の内側を見るためのいい道具でもある。いいリードができる時は自分に素直になった時でもある。
チャクラ、、、というのはインドの瞑想入門に使われる体の中のエネルギースポットの象徴で、レインボーカラーを使って示される。楽器を吹く前、リードを調整する前に、実はその場所をまず開いた状態にすることから始める。そのことに気がついたのは、アメリカに来てヨガを習ったことがきっかけ。リードとの関係性を見つけたのは、それが自分の職業だったからで、きっと他の職業の方はそのアイデアをご自分の職業や健康と繋げているに違いない。自分の体のことがわかってきたら、リードのことも見えて来た。体のストレス度とリードの調整部分(削る部分)がシンクロ作用するのだ。これは実践を持ってでしか詳しくは伝えられないが、簡単に言うとそうなる。
前回の「オーボエリードの極意」で、のミクロの世界を書いたばかりだが、これらはそれらの知識とは無関係で、それらの細かな知識を何も持たずともできる技。そしてその時出来るベストを引き出すことが出来る。リードが雨の影響で不機嫌でも、なんとかコントロールできる。
写真はこれまでの歴代の先生方や、自分の作ったリード。20−30年前のものだが、何かの発見があって捨てられなくて、標本のようにとってあるリード。先ほど、このリードケースを見つけたときには保管しておいたことすら忘れていたほど。一つ一つの物語はもう思い出せない物もあるが乾き切って、思いっきり開いてしまっているので当時の感動を味わえるほどは吹けないだろう。左から30年前まで吹いていたショートスクレープ〜25年前くらいのアメリカンリードに移行している。ここ最近20年はチャクラの理論で解決しているので、使用後さようならしたり、生徒に譲ったりしているので、今使っているもの以外は手元にない。