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未来を見る

音楽が大好きという方は多い。

 

自覚している、していないに関わらず、音楽無しでは、寂しくていられない、、、という方や、落ち着かないという方も多数いらっしゃる。

 

無声映画、、、映像と音声を一緒に収録できなかった時代は、そこにはライブミュージシャンが音楽に合わせて演奏していた。ドラマや映画に音楽が付いていないと、もの足りないと思うのは殆どの人が同感だと思う。

 

音楽を聴くのが大好きで、ぜひ楽器を音楽を習いたいという方が来られる。

音楽を聴くことが大好き、、、習う時の第一条件だと思う。

 

でも、聴くことが好きだからと言って、演奏することが好きかどうかは、やってみなければ分からない。食べることが大好きだからと言って、みんなお料理が好きかどうかは分からないと同じ。漫画を読むのが好きでも、漫画を描くことが好きかどうかも又別物。

 

歌うことが好き、、、という方だったら、楽器を演奏する事に挑戦するといいと思う。媒体(体の使う場所)が違うだけで、表現したいものはもう出来ていると同じだからだ。

 

まず初日のお試しレッスン兼インタビューでは、これまでの音楽経験と、これからのビジョンを伺うことにしている。音楽レッスン経験がなかったとしても、よく聞いている曲、よく歌っている曲、好みを大体把握しておきたい。ビジョンは親御さんが習わせたい場合は親御さんの子供に抱いているイメージや、期待している内容、そして子供さん自身の目標設定や、希望など。もちろん私が教えたい事もたくさんあるけれど、相手が希望していないものは、どんなに頑張って提示しても、レッスンという時間の中で技術を習得させるという商品化にならないのだ。

教えるという行為は常に相手の希望に合わせてこちらから提案しなくてはならない。

 

別の言い方をすれば、相手が聞きたいと求めている言葉しか届かないと言うこと。あえて言うなら、相手が何が足りないかと自覚してからなら、こちらから提示するチャンスはあると言うこと。

 

先生が生徒を選ぶ、、、と言う時代もあったし、そういう立場の先生方も、もちろん今でもいらっしゃる。でも殆どの場合、今は生徒が先生を選ぶ時代。親御さんのリサーチ力は計り知れない。口コミや噂はどこまでもおヒレが付き、ネット検索にかからない先生方は口コミや噂話の裏を取れない。

私の場合も、新規の生徒さんは他の生徒さんの紹介のみに頼っている。中には「自分の先生を取られたくないので、友達や知人に紹介したくない」と言った衝撃的な言葉を聞いたこともある。全く難しい商売だ、、、。

 

お洋服を買いに行く時、

「似合う服が全く分からないから、誰か選んで欲しい」と言う場合、

「この色でこの素材、この形の服が欲しい」と探す場合、

「まだ出会ったことのない服を、自分で見つけたい」と探す場合、

の3種類の気分があるだろう。

 

音楽も似た様なことが求められる。どんな楽器がいいと思いますか?とか、どの曲を次に練習したらいいですか?とか。だから常に人間観察をする。性格や好み、体型、声質などで、どの楽器が習得しやすいか、又はどんな習得方法が向いているか、自分の中のデーターベースで考える。

 

主に視覚的、聴覚的、知覚触覚的、論理的など、どの分野に秀でているかで、説明の仕方や方向性を変える。ZOOM でレッスンが難しい場合があるとしたら、それは知覚触覚に頼っている場合。

稀にそれらのすべてのバランスが整っている、1を聞いて10を知る感性と知性のバランスが整っている方。でも、そう言った賢い方は、先が見えすぎて(ゴールの遠さに気が付いて)かえってやる気を失ってしまうこともある。これは勿体ないといつも思う。行動力と計画力、創造力、想像力がちょっと足りないだけかもしれない。

それに引き換え、どんなに先が遠くても、必ず道はあると諦めない方もいる。このタイプは本来開拓者。同じく1を聞いて10を心得ている訳だから、あとは歩むのみ。自主性が生まれた途端に、水を得た魚の様に元気に進み始める。

 

「練習しても練習しても、ほとんど変わらないんです、、、うまくなったか上手くなっていないのか分からない、、、」と言う様なスランプ状態も、長く習っている方は幾度も経験すると思う。音楽以外のスポーツや、ダンスなどの芸術、向上心を持っていれば誰もが経験すると思う。でも、それでも諦めないで、いろんな方法を探り続けて勉強や実験をして欲しい。それは目に見えない経験というダムにエネルギーを蓄えるのに似ている。ある日気がつかないうちにいっぱいになって、それは力となって、溢れ出す。その時にびっくりするのは本人だから。

 

先が見えすぎてしまう人、先が見えない人、どちらのタイプにせよ、私が対応して、コントロールできるのは、1週間後、又は2週間後に会うの相手のイメージ。その積み重ねで、3ヶ月後のリサイタルの準備、半年後のテストの準備を行う。そして数年後の夢を叶えさせるために、毎週練習プランを練る。

期待通りにいかないこともたまにはあるが。

 

でも、ここで大切なのは、親、先生、子供の三角関係の中で、やはり本人の意思が一番優先順位が高いということだ。ここにエネルギーの要がある。手先の器用さ、物覚えの良さ、などの能力は個人差があるが、このエネルギーに勝るものはない。ここでいうエネルギーは「意志の力」と言い換えられるかもしれない。

 

未来を見るという事は、少なからず、私にとって今の所一番やる気を起こす事。時には相手のエネルギーが低すぎて、私がどんなに頑張っても動かせない日もある。でもそこにネガティブな感情は一切挟まない。もちろん若い頃は、「嫌われたらどうしよう」「失敗したらどうしよう」「忘れてしまったらどうしよう」「上手く出来なかったらどうしよう」などなど、本番の1週間以上も前から、ステージを想像したら全身に冷や汗が出てきたりした。生徒の発表会も同じく、、、。でも、一度そう思ったら渦巻の様に悪い思考は止まらない。

それを防ぐ為には、普段の練習から、コンサートを意識して常に人前で演奏していると思って練習する様にした。レッスンもそれを意識するスタイルに切り替えた。

リビングはイメージトレーニングで数百人のお客さんが入る大きな開場。それが普通になってからは、全くイヤな感情は、起こらなくなった。これは生徒にも伝授している。リビングルームに置いているピアノの位置もステージとお客さんを意識しやすい様に置き換えた。

初めの段階でこのイメージトレーニングを必要としない場合が多いが、大人びた子供さんには注意が必要。実際そのプレッシャーがイヤでやめてしまった子もいる。音楽は嘘をつけないのだから、普段やっていることがそのまま出る。普段やっていることを変えれば、本番も変わる。本番だけうまくやろうとしても、上手く行った時、それは殆どの場合ビギナーズラックで終わってしまう。(天真爛漫な幼少期は、無邪気な場合が多い)それらの感情をコントロールできる様になったら、人前で演奏する事が、安定してくる。

 

とにかく今の練習は未来の為にあると、自覚を持って毎日ちょっとづつ取り組む習慣を。数年後に待っている壮大なリターンを夢見て。「継続は力なり」

 

その為に私のできる事は、練習プラン作りと、相手が求めているものに少しのプラスアルファを、どんな形で提供できるか、、、というチャレンジ。

常に馬に人参をぶら下げて、走ってもらう努力に似ているかな。人参が何になるかは、人それぞれ。新しい曲だったり、新しいステージだったり、ちょっとしたギフトだったり、グレード試験だったり、褒め言葉だったり。

 

ムリは禁物。意志〜心を折ってしまってからでは、その後の立て直しは非常に難しい。常に相手のキャパを計算しながら。又は正直に相談し合える間柄になっておこう。お互いに心を開けない場合も、中にはある。自分にもキャパはある。どこまで頑張ればいいかは、自分が決めるしかない。

上手くいかないな、、、と思ったその時は相性が悪かったと、あまりくよくよ考えないで。